2013年11月4日月曜日

ワークショップをつくるワークショップ(ふりかえり-その2)

 前回は、ワークショップの設計の際、最初のほうで目的をしっかり確認する必要性を説明しました。

 話の後先が逆になりましたが、私がワークショップを設計・構築・実施する際にどういった流れで行っているのかを書きます。ざっと以下の活動を行います。もちろん準備が入れ替わることもあります。後でこのエントリー自体を修正する可能性もあります。

1. 目的の確認

  • 依頼に至った背景
  • 現在の課題
  • 課題解決のために対象の技術や手法をどの程度の範囲と深さで習得をしたいのか
  • 課題を解決した結果、どういった状態に達したいのか

2. 受講者像の構築

  • 簡易型ペルソナ
  • 共感マップ


3. 自分のできることの棚卸

  • パーソナルキャンバスを描いて、自分ができることを整理する


4. ワークショップで扱うトピック検討

  • 目的、受講者像の比較
  • 必要なトピックの洗い出し

5. ストーリー検討

  • トピックのだいたいの順番を検討する。これがワークショップのストーリーになる

6. ワークショップの準備の計画

  • ワークショップのストーリーから準備に必要なタスクを洗い出す
  • トピックと自分のパーソナルキャンバスを比較し、不足部分の学習計画を立てる
  • 掛かる時間を見積もる

7. ワークショップの準備

  • 計画に沿ってひたすら作業をする
  • 私の場合は、スライド、ツール類、指導書の3種類が具体的な成果物になる。指導書はワークショップのストーリーに沿って各トピックでの説明やワークの手順などを記述した文書。いわゆる脚本。

8. フォーカスグループで検証

  • フォーカスグループに参加してくれる人を募る
  • ワークショップのテストを行う
  • フォーカスグループにアンケートをとる

9. フォーカスグループのフィードバックを反映させる

  • 時間配分の確認
  • 説明内容や扱うトピック、順番なども確認

10. ワークショップ前日

  • 配布物の準備
  • ノートPC、リモコン、タイマー等の準備
  • ペン、付箋等の準備
  • アンケートの準備
※ フォーカスグループ向けのワークショップの際も同様の準備をします


11. ワークショップ本番

  • 準備がしっかりできていれば、それに従って進行するだけなので、本番の時はイレギュラーケースへの対応などに集中できる
  • 準備をしっかりすることで陥りやすいのが事前に用意した資料だけでは説明内容が伝わらず、受講者の手が止まってしまう場合。この場合は実際に自分でも手を動かし実演をしてみると上手くいくこともある

12. ワークショップふりかえり

  • アンケートのレビュー
  • スライド、ツール、指導書の更新
  • 汎用的に使える成果物があれば、それを切り出しておく

だいたいこういう感じです。


(つづく…?)

ワークショップをつくるワークショップ(ふりかえり-その1)

 前回は、高度で専門的な技術や手法を短期間で修得するためにはワークショップは有効であると書きました。そして、そのためにはワークショップを自分たちで作るのがオススメですと説明しました。それから、そのためにはワークショップをつくるワークショップというのがあれば、とても良いのではないかと説明しました。今回はから、ワークショップをつくるワークショップを考える前に、そもそも私がどうやってワークショップを作っているのかを振り返りたいと思います。

 私は特別な手法やツールなどは使っていません。しかし、学生時代に演劇部で脚本・演出を担当していたことと、テーブルトークRPGのオリジナルルールとオリジナルシナリオを作成したことがあるので、もしかしたらこれらの経験が役に立っているのかもしれません。ですので、これからの説明において何故そうするのか?、何故そのような判断をするのか?といったところ理由が判然としないやり方が出て来るかもしれませんが、演劇やテーブルトークRPGの経験から無意識的にそのようにしている可能性も考えられます。できれば、自分でも暗黙的にやっていることを、こうやってふりかえって文章化することで、その行動や判断にいたるパターンを見つけ出せればと思います。
(※ 前回からそうですが、この一連の文章はアジェンダもシノプシスも用意しないで思いつくままに書いているので、どういった方向に進んでいくのかは私にもわかりません)

 ワークショップ設計で最初にやることは、ワークショップが何を目的としているのかを整理することです。ワークショップは技術や手法の習得の場であるので、何らかのトピックについて体験をしながら学ぶことになります。例えば、ビジネスモデルキャンバスについて学びたいのであれば、ビジネスモデルキャンバスを描いてみるということです。

 ビジネスモデルキャンバスのワークショップの場合、それを企画し依頼した方達には、ビジネスモデルキャンバスを用いてやりたいことがありました。それはビジネスモデルキャンバスを描くスキルによって現状に変化をもたらしたい(良い影響を得たい)という意思がありました。ワークショップを設計する時、初期段階でもっとも重要なのは、この学んだことを使ってどうしたい、どうなりたいのかといった背景や目的を知ることだと思います。可能であれば、受講者の仕事ぶりなどを観察できればベストですが、実際のところそこまではできないので、企画した人達に依頼に至った背景、現在の仕事の課題、ビジネスモデルキャンバスを通じてどういった状態に達したいのか、といったことをなるべく細かにヒアリングをしていきます。こうした準備の前の準備とも言える活動をしっかりやることによって、活きたワークショップになるか、単なる知識習得の場で終わるのかが分かれてくるのだと思います。

(補足)
 単純に、特定のトピックについて学ぶワークショップもあります。背景の異なる場(例えばコミュニティ等)で実施する際は、背景、現在の課題、理想の状況などを調査することが難しくなるかもしれません。この場合、徹底して抽象的で背景や目的を問わずに理解してもらえる説明を心がけるか、対象を絞りはするもののワークショップの際に「この例では〜」といった説明をしてフォローをしていくことになります。

 個人的な見解ですが、ビジネスモデルキャンバスだけでビジネスモデルの分析や立案が上手くいくとは思いません。ビジネスモデルキャンバスは汎用性の高い優れたフレームワークですが、状況に応じて補助ツールを使っていくほうが良い場合があります(恐らく、補助ツールを使うよりもキャンバスそのものを改造するアプローチの方が多い)。しかし、ワークショップにおいてどういった補助ツールを利用するのかは、受講者の背景・課題・目的によるのだと思います。



(つづく……かも)