2012年2月22日水曜日

「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」のテストにでそうなところをメモした


「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」

もともと @kuranuki さんがTwitter/Facebook/Blog でオススメしており、面白そうだなーと言っていたら @warppy_ が「あるよ」と言って貸してくれたことがキッカケ。

結論から申し上げますと、この本、めちゃくちゃ面白いです。読んでる間はずっとハッピーでハイな気分になります。マーケティングに関する本は何冊か読んだけど、そのほとんどは「組織として合理的な施策」をとることの必要性を説明していますが、本書は自分たちが「本当に好きでやりたいことをやる」ために「自分たちの頭で考える」ことを主張していて、その結果として「組織としての合理的な施策」に繋がるという、もう、いいから読んで! 読むべき!

自分用備忘録としてテストにでそうなところをメモしておきます。読んだ人なら、このメモをみれば内容を思い出せるし、読んでない人はなんのこっちゃになると思います。なんのこっちゃだけど気になる人は、↑のリンクでAmazonさんに飛んでいただいて適宜ポチればいいと思います。


Introduction
1. 従来の業界の思い込みを見直す
2. 消費者をエヴァンジェリストにする
3. 消費者に直接販売する
4. たくさんの熱心なファンを作る

Chapter 1. ユニークなビジネスモデルをつくろう
「グレイトフル・デッドは、当時活躍していたすべての他のロックバンドと正反対のやり方で利益をあげた。」
LESSON 他人とは違うビジネスモデルをあみ出す
 「グレイトフル・デッドは、ビジネスモデルの革新が、製品の革新と同じかそれ以上に重要であることを教えてくれる。」
CASE ル・ラ・ラは、オンラインで高級ブランドを買う場を作り上げた
ACTION 自分が戦いやすい土俵を作る

Chapter 2. 忘れられない名前をつけよう
 「「大好き」、「大嫌い」、「意味が分からない」……どう思われるにせよ、グレイトフル・デッドは人が覚える名前だ。」
LESSON 印象的で忘れられない名前を選ぼう
 「グレイトフル・デッドのように個性的で忘れられない名前は、成功をもたらす。」
CASE ハブスポットとデイヴィッド・ミーアマン・スコット
ACTION 記憶に残る印象的な名前を見つけよう

Chapter 3. バラエティに富んだチームを作ろう
 「グレイトフル・デッドは、バラエティに富んだスキルを組み合わせた相乗効果で、前代未聞の 1+1=3 のサウンドを作り上げた」
LESSON 異なる才能がある人を集めよう
 「自分たちが専門としている分野や、なじみのある分野以外から、能力のある人を連れてくることが重要である。」
CASE デジタルの女王ジュリア・ロイがCOACHで活躍
ACTION 会社のマーケティング部門を見直そう

Chapter 4. ありのままの自分でいよう
 「ファンは、グレイトフル・デッドのい”偽りのない本物らしさ”に親しみを覚えた。」
LESSON 自分の真の姿を隠そうとするな
 「グレイトフル・デッドは、透明性さえあれば、過ちはすぐに許してもらえるものだと教えてくれる。」
CASE セールスフォース・ドットコムの失敗と成功
ACTION 社員に自由を与えよう

Chapter 5. 「実験」を繰り返す
 「グレイトフル・デッドは、グループとしても個人としてもいろんな音楽の形式とジャンルに挑み、ユニークなライブを生み出した。」
LESSON 常に新しい実験をしよう
 「グレイトフル・デッドは、リスクを取り、新しいことに挑み、失敗と成功から学び、前者し続けることを教えてくれる。」
CASE ドロップボックス「素早く学び、何度も学ぶ」
ACTION マーケティング部門が実験をしてみる

Chapter 6. 新しい技術を取り入れよう
 「ライブで技術を活用したためにグレイトフル・デッドは更にクリエイティブになり、最も成功したツアーバンドになった。」
LESSON 最新の技術を積極的に取り入れよう
 「グレイトフル・デッドは、テクノロジーを取り込むことでクリエイティブなプロセスが促進され、最高レベルの成功をもたらしてくれることを教えてくれる。」
CASE アメリカ国防総省も取り入れている新しいメディア技術
ACTION 会社のソーシャルメディア用ガイドラインを作ろう

Chapter 7. 新しいカテゴリーを作ってしまおう
 「グレイトフル・デッドは音楽ジャンルの境界を超えて独自のサウンドを作り出し、他のバンドとは異なる存在になった。」
LESSON これまでにないカテゴリーを作ってしまえ
 「ライバルがいない新しい市場を作るためには、グレイトフル・デッドのように常識を無視すればよい。」
CASE 新しい投資家のカテゴリーを作り上げたYコンビネーター
ACTION 業界の境界線を書き換えよう

Chapter 8. 変わり者でいいじゃないか
 「グレイトフル・デッドは、自分たちが変わり者でいることで、ファンにも風変わりであることを奨励し、クリエイティブに表現する機会を与えた。」
LESSON 他人とは異なる自分でいたい人を狙え
 「私たちは、ある意味ではみんな変わり者なのだ。賢い会社は、変わり者を理解し、そこから市場を作り出す。」
CASE ファットでハッピーなニュー・ベルジャン醸造会社
ACTION 変わり者を育てよう

Chapter 9. ファンを「冒険の旅」に連れ出そう
 「グレイトフル・デッドは、「グレイトフル・デッド体験」が何であるかを、ファンに決めさせた。ファンを自分たちと一緒に旅する対等なパートナーとして扱ったのだ。」
LESSON 親密な絆を作る冒険の旅に招待しよう
 「コミュニティこそが、自分たちが何者であるかを決める。企業は自分たちの考えを顧客に押し付けることはできない。」
CASE バートン・スノーボードの冒険の旅
ACTION マーケティングのメッセージをコントロールしようとするな

Chapter 10. 最前列の席はファンにあげよう
 「グレイトフル・デッドは、ツアーの情報をファンに真っ先に知らせ、最も良い席を取れるようにし、その忠誠心を駆り立てた。」
LESSON 忠実なファンを大切にしよう
 「配慮と敬意を持って消費者に接することこそ、情熱的なファン層を築く秘訣だ。」
CASE バラク・オバマとファンを最優先すること
ACTION 最も忠実なファンに絞った企画をしよう

Chapter 11. ファンを増やそう
 「グレイトフル・デッドは、音楽業界でいち早くデータベース・マーケティングを取り入れたバンドだった」
LESSON ファンと直接つながろう
 「グレイトフル・デッドは、顧客や消費者と個人的なつながりを作り、連絡を取るために最新の技術を利用することを教えてくれる。」
CASE ハブスポットはウェブサイト・グレーダーで「リーチ」を拡大した
ACTION リーチを増やそう

Chapter 12. 中間業者を排除しよう
 「グレイトフル・デッドは、中間業者を排除して、ファンにチケットを直接販売した。」
LESSON お客さんに直接販売しよう
 「グレイトフル・デッドは、自分と顧客との間にある何層もの中間業者を取り去り、顧客を直接取り込むことを教えてくれる。」
CASE グーグルは広告代理店の必要性をなくした
ACTION お客さんと直接つながろう

Chapter 13. コンテンツを無料で提供しよう
LESSON コンテンツを無料にすることで「リーチ」を増やそう
 「ファンにライブの録音を許したことが、グレイトフル・デッドの音楽に人々が触れる機会を増やし、新たなファンの獲得と売上の増加につながった。」
CASE MySQLはデベロッパーにソースコードを無料で提供している
 「グレイトフル・デッドは、コンテンツを無料で解放すると、より多くの人々が自社について耳にするようになり、結果的に取引してくれるようになると教えてくれる。」
ACTION 得ようと思ったら、まず与えなければならない

Chapter 14. 広まりやすくしよう
 「グレイトフル・デッドが禁止しなかったために、その音楽はファンによって広めやすくなった。」
LESSON 口コミが広まる工夫をしよう
 「グレイトフル・デッドは、消費者や顧客がコンテンツを広めやすいように工夫すれば、製品を広く知ってもらうことができると教えてくれる。」
CASE なぜマッシャブルのコンテンツは広まるのか
ACTION あなたのコンテンツを広めやすくしよう

Chapter 15. フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう
 「グレイトフル・デッドは、ファンがライブをタダで録音するのを奨励したが、より品質の高いものを求める人のために、自分たちが録音したもののを直接販売している。」
LESSON 無償版を高品質の有料版へアップグレードしてもらおう
 「グレイトフル・デッドは、最も情熱的なファンは最高の品質を得るために、プレミアム価格を払うことを教えてくれる。」
CASE 電子書籍リーダーのソフトを無料で与えて専用端末を売る
ACTION 無料版を作成しよう

Chapter 16. ブランドの管理をゆるくしよう
 「グレイトフル・デッドは、そのブランディングにおいても、即興演奏のようなスタイルを取った。」
LESSON ブランドを厳密に管理しすぎないようにしよう
 「グレイトフル・デッドは、ブランドの「個性」を表現すれば、見た目が多少違っていても、ファンは気づいてくれることを教えてくれる。」
CASE グーグルは、ドゥードゥルで企業イメージを明るくした
ACTION デザイナーたちに自由を与えよう

Chapter 17. 起業家と手を組もう
 「グレイトフル・デッドは、自分たちのロゴを付けた商品を売る行商人に「ノー」と言うのではなく、使用を許可した。」
LESSON ライバルを味方にしてしまおう
 「自社のブランドを使って収入を得たい個人事業者や新興企業がいたら、探し出して提携してみよう。」
CASE アマゾンの世界で最も人気があるアフィリエイトプログラム
ACTION 自社の製品やアイディアをまねする者と提携してしまおう

Chapter 18. 社会に恩返しをしよう
 「グレイトフル・デッドはとても気前がよく、そうしたブランドイメージが、彼らの成長と成功を助けた。」
LESSON 真心をこめて慈善事業を選ぼう
 「グレイトフル・デッドは、一貫性がある継続的な社会への恩返しこそが、非常に重要な恩恵を企業にもたらすと教えてくれる。」
CASE ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ
ACTION 自分のコミュニティに恩返しをしよう

Chapter 19. 自分が本当に好きなことをやろう
 「グレイトフル・デッドは、自分たちがやっていたことが本当に好きだったのでそれをやり通した。そしてもちろん、結果的に成功した。」
LESSON 本当にやりたいことをしよう
 「グレイトフル・デッドは、他人の夢ではなく、自分自身の夢を生きることを教えてくれる。」
CASE ビル・ゲイツは、自分の人生の主導権を握っている
ACTION 今、この瞬間を楽しもう

本書の発刊によせて ビル・ウォルトン(NBAスーパースター)
「ちゃんと見さえすれば、思いも掛けない場所に光を見出すこともある……。」

2012年2月19日日曜日

デブサミ2012の感想

デブサミで思ったことをつらつらと。

まず、東さんのセッションで、この10年間のとくに最近において「ユーザーニーズと提供者の都合」のパワーバランスが前者に傾いたという話が今回のデブサミ全体で共通するトピックであると思いました。ちょっとゲームのルールがこれまでの延長線上からだけでは対応していくのは無理なんじゃないかと思うような。自分でも思っていたのだけど今回のデブサミに行ってよりその現実を付きつけられたというかなんというか。

業務系のシステム開発の現場では、リーマンショックの影響っていうのはそれなりにあって、案件規模が小さくなったり、短納期になったりといったことがあったと思うのです。外的要因として、システムを発注する顧客側がシステムに対して今まで通りには投資することができなったということでしょう。その結果が値下げの交渉であったり、いっそありものつかっちゃえーなSalesforceやGoogle App Engineの導入が進んだのではないのかと。

ゲームの方はというとソーシャル系のものやApp Storeの影響があって、ちょっとお金出せば遊べる、あるいは1円も払わなくても遊べたりするわけです。私が子供の頃、高くてめったに買えなかったKOEI三国志のシリーズは14,800円で提供されていたものがiPhone版になると1,200円で販売されました。10分の1以下です。しかし、それでもApp Storeの文脈でみたら1,200円って高いと思えますよね。だったらもっと安いアプリで遊ぶわーみたいな。ちょっとすごい世界です。

世の中というものは「安くて簡単」な方に流れるもので、服飾の世界なんかみればわかるんですけど、一人ひとりに合わせて誂えていたものが、いつしかパターンオーダーとなり、それが店頭で吊し服として売られるようになり、それが更に値段をどんどん下げているわけです。どこでも買える大量生産されている服ってうーん…、って思うんですけど安いしその辺で買えて便利だから、それでいいやーってなっちゃうわけですよ。(個人的には、何を着るか以上に、それをどう着るかの方が大事だと思うようになったので、服そのものの価値はそれほど感じ無くなったんだよなー…)

つまり、一般的なユーザーからしたらソフトウェアに対して払ってもいいと考える金額が下がる傾向にあり、ここ数年はその流れが一気に加速したわけです。

コストのダウントレンドが顕著であれば、対応策の一つとしては売る相手を増やすというのがあります。グローバルな市場にでていくわけです。しかしこれも哀しいかな、世界に散らばる強敵と書いて友と読む強敵達は、友な要素がまったくなく、むしろ日本国内の市場すら侵食されっぱなしな状態です。

さて、この状況を打開するにはどうするか? 選択肢としてはすでに普及しているものを駆逐するか、その上にのっかって美味しいところをもっていくしかないわけです。前者をやるのは体力的に相当しんどいので、多くの組織や個人は後半を選ぶことになります。その場合、すでに存在するプラットフォームを利用して、利用者や顧客に対してこれまでのITシステムやソフトウェアではできていなかったまったく新しいものを創造する必要があるのではないでしょうか。既存システムの延長線上にとどまらない、ユーザーのワークスタイルやライフスタイルそのものを変えてしまうようなレベルです。

「まったく新しいものを創造する」のは当然難しく一朝一夕でできるものではありません。イノベーションは継続的な試行錯誤の積み重ねからしか生まれないのです。そして、「ユーザーニーズと提供者の都合」のパワーバランスが前者に傾いたというのは、単純に既存業務をそのままITシステム化すればいいとか、あるいは既存ITシステムをなるべくそのままリプレイスすればいいとかの話ではないでしょう。組織のビジネス(収益)に貢献しつつ、実際に使うユーザーにとって役立つものになっている。これがコストのダウントレンドと合わさることで、開発者からみたらより困難な時代になっていくのかもしれません。

しかし、ちょっと良い目もあるのかなと思うところがあって、このような厳しい状況下では今まで以上に合理的にやっていく必要があるわけで、そういう時にリーンの考え方が普及すれば、あらゆる現場や組織が無駄を排除するでしょう。そしてより実効的で早い意思決定のプロセスが重宝されるはずです。それは局所的なものではなく、組織やビジネスモデル全体を俯瞰した上で行われるべきです。またビジネスとITの融合が相当進んだ今となっては、ビジネスとITが分離したまま話を進めるのは無駄もいいところで、両者を一緒にして短期間で目指すべき道筋を発見していく必要があり、そこにはデザインの力がキーになってくると考えられるわけです(そこで「サイクロン」ですよ、と言いたいw)。

さて、話をコストのダウントレンドに戻します。アジャイルは開発の現場に良い文化をもたらしたと思います。しかし今までのアジャイルでこのえげつないまでのダウントレンドを乗りきれるのでしょうか? これはアジャイルがどうたらというよりは、今のやり方でこの先もやっていけるのだろうか? そういう不安があります。思うに、コストという避け用のない現実と向きあって収益の流れから考え直す必要があるのかもしれません。つっこんだ人月の分だけコストを請求するモデルがいつまで続けられるのか…。これは倉貫さんのお話は解決策の一つであると思います。
そして、ダウントレンドに対して戦えるだけの武器を揃える必要もあるでしょう。当然、銀の弾丸はないので、現場・組織、あらゆるレイヤーで徹底的な効率化をしていくことも必要です。

さて、まとめますと、非常に厳しい世の中だなーという認識が強くなりました。いま書いた話だって「できんの?」って聞かれたらできる保証はありません。でも問題の箇所がはっきりしてきただけましだし、やってみないことには何にも変わらないのだから、だったらやってみようかと。そう思ったらひたすら動きまわっていくしかない。そんなデブサミ2012の感想です。




多分ね。

p.s.
セッション合間の立ち話や、サインをもらう時、そしてお酒を飲みながらいろんな方と話をしていろいろ勉強になりました。デブサミに関わったすべての人に感謝です。