2011年9月29日木曜日

書店と出版と書籍の未来について思うこと

私の父は今年の11月で60歳になる。父は私にいろいろなことを教えてくれたがその中でも特に感謝しているのは下記だ。

・本を読め
・本代をケチるな

実際、私が学生の頃は本に払う金がなければ気前よく小遣いをくれたし、そうして買った本の中には私に大きな影響を与えたものもある。また本の貸し借りもしていたので「ザ・ゴール」は父から借りて読んだ。父は言葉に出して言わないが、継続的な読書が人生をより良くしてくれるものと思っている節がある。
そういう父の影響を受けた私としては、彼の還暦祝いに Kindle か iPad を贈りたいと考えていた。書籍購入にかかる請求先は私宛にして。
しかしこの目論見は実現しそうにない。残念ながら Kindle や iBooks が日本で本格的なサービスを開始する目処は立っておらず日本語書籍もほとんどない。日本の出版社やメーカーからでているサービスはいまだ決定打と呼べるものがなく、むしろ購入しても早々に撤退しそうな雰囲気がありありであり、とても還暦祝いにプレゼントできるようなシロモノではない。
(この手のサービスはいつも「夏目漱石」や「太宰治」などのド定番を最初のラインナップに加えているが、それらが読みたくてわざわざリーダーを買うと思っているのだろうか?)
Kindle が発表されたのは2年くらい前で、私は2年もあれば日本でもサービスを開始するものだろうと思っていただけにとても残念だ。

・大手出版社に対する不信の念
彼らは「出版」というものを何だと思っているのだろう?
今の状況はどう考えてもレコード会社と同じ徹を踏んでジリ貧になることは間違いない。ビジネスとしてみるとあまりにもひどい状況だと思う。文化面でみるとどうか? 私はこの点において怒りを通り越して呆れている。

・書店
極論かつ推測で恐縮だが、将来有望な若者が多く育つ地域には良い書店があると思っている。知的な情報に気軽に、頻繁に接することができれば、興味が書籍から得られる情報に向かうのは自然な流れのはずだ。だから、そういった事業に関しては税金で優遇するとかあっても良いのではないかとすら思っていた。いちおう図書館がそういう役割を果たしているのだろうが、店主のセンスで大胆な書棚の構成ができる書店にも何らかの支援があっていいと思う。しかし現実は、Amazon.co.jp の台頭により、街角の小さな書店がどんどん姿を消している。ターミナル駅の周りには巨大な書店がどんどん立つようになったが、大量の在庫を用意しなければ来客数を確保できないこの流れは、ネット書店の魅力とかぶってしまっている。大手書店も生き残っていくのは大変だろう。

・今後どうなるのか?
地域から書店が姿を消すことによって、その地域の子供たちが書籍に接する機会が減る。間違いなく減る。自分で本を選んで買う機会も減る。すると子供は読書以外の遊びをするだろう。読書の習慣のない子どもが多く育つことになる。彼らは当然、大人になっても本を買わない。情報収集は別のやり方で行うだろう。これは結局、出版業界自体の首を締めることになるのだが、そういうことには思いが回らないのだろうか?
また、極めて偏った物言いで恐縮だが、読書の習慣のない人は情報収集が遅く仕事においてマイナスになる。ちょっとした文章を書かせても誤解を生むような書き方や、伝わらない書き方をして、周囲の人間にいらぬ負担をかけている場合がある。「こいつのメールはいつもつらつら長いが何が言いたいのかさっぱりわからない」といった経験をみなさんもお持ちではないだろうか?(※)
読書を通じて言葉の扱いに長けていくことはとても大事だ。「読み書き算盤」と良く言われるが「読む」にも上手い下手があることを認識している人は少ない。読むのが下手なら書くのも下手になるのだ。これを疎かにして、今後いったいどうしていけというのだろうか?

 ※私の日本語もひどいもんだけど

・やるべきことはシンプル
一刻も早く、Amazon でも Apple でも Google でもいいから電子書籍の販売網を整備するべきだと思う。現在の出版、印刷、取次の業界の既得権を気にしている間にも日本人は学習機会を損失しつづけている。また電子書籍の普及は大量の在庫を抱える必要がなくなるので、待ちの小さな書店にとってもメリットになるはずだ。数台の端末を設置し、来客者に対して書士として対応すればいい。マンガ喫茶みたいな形態もありだと思う。多くの可能性があるはずだ。しかし紙の書籍では売場面積による棚在庫の数だけが本屋の価値になりがちである。あらゆるものがデータ化されるこの世の中でそんな馬鹿馬鹿しいことがあるのだろうか?
大手書店はスペースがあまるだろうから、出版された書籍に関するイベントをもっと頻繁にやったらいい。どのみち、本を売るだけで儲けをだしていくのは難しくなる時代だ。以下に効率よく手持ちのスペースを活用していくのかは書籍が電子化しようがしまいが関係なく考えなければならないことだ。

・あらためて「読み書き算盤」
この世の中がどんなにIT化されようと、ましてや人類補完計画や攻殻機動隊の世界が実現しようとも、言葉を扱うことの大切さはかわらない。やりとりする情報量が増えるのであればより重要になってくる。それの熟練度を上げるのは日々の読書体験だ。どうか日本の出版関係者は、私たちや私たちの子供たちが、あって当然である読書の機会を損なわないようにしていただきたい。欧米では提供されて日本にはない。こんな不公平があるか?
本から多くのことを学び、育ってきたからこそそのように願う。





多分ね。

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